ミュージカル『レ・ミゼラブル』の劇中歌で、唯一楽しそうな印象の歌「宿屋の主の歌」の和訳の歌詞についてご紹介します。
この曲は、なんとも”ふてぶてしい”主とその妻が、どうやって宿屋をやっていっているのかを、宿に泊まっている酔っぱらったお客さんたちと一緒に、結構シュールな内容なんですが楽しく明るく歌っていますよ。
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歌のタイトルである「宿屋の主の歌」の宿屋の主とは、テナルディエのことです。妻からの合いの手というか、ツッコミがかなり毒付いていますが、ご愛敬で楽しい歌です。
私はこのお笑いコンビ、トレンディエンジェルの斎藤司さんのテナルディエを見た時の衝撃が忘れられません。残念ながら声量はミュージカル役者と比べられませんが(でもみごとにオーディションで勝ち取られたんですよ)見た目、はまり役なんじゃないかなとほくそ笑みました。
斎藤さん良い声で上手ですが、ひょっとして物足りなさを感じる(斎藤さん、ごめんなさい)方もいらっしゃるかもしれませんので、橋本じゅんさんのバージョンも紹介しておきますね。
テナルディエ夫妻は、森久美子さんのバージョンもあって、話題性のある役どころになっていますね。斎藤さん&森久美子さんのテナルディエ夫妻が見たかった私は単なるミーハーです。
「宿屋の主」テナルディエ夫妻とは?
パリ郊外、モンフェルメイユで宿屋を経営していました。痩せた主人と恰幅のいい夫人という夫婦です。
泊まりに来た客たちから金品を巻き上げるという、今の時代ではありえない経営方法をやっている、相当な悪者で、真面目に商売に取り組もうとはしません。
夫妻は、自分たちの貧しさは神様や世の中のせいだと責任転嫁をしてヤケになった印象があります。ミュージカルではコミカルで思わず口ずさんでしまう陽気な歌とともに伝えていますので、結構ヒドイやり方なんですが、どこか憎めない「してやったり感」がある人物ですね。
テナルディエ夫妻のやり方
(引用:https://www.umegei.com/lesmiserables/)
ファンテーヌからコゼットを引き取ってからは、女中として彼女をタダ働きさせていたにもかかわらず、養育費としてファンテーヌから金を請求し続けました。
テナルディエ夫妻の借金がかさみ始めていたころに、この物語の主人公であるジャンバルジャンがコゼットを引き取りに来ました。引き取りに借金と同額の代金をもらったテナルディエ夫妻。
でも、その額でコゼットを売ったことをテナルディエは、後悔します。もっと高く売っておけばよかった、と。借金がなくなったんですからヨカッタと思うべきなのに、どこまでもがめついですね。
そんな経営ですから最終的には宿屋も倒産してしまいました。
パリに移り住んで乞食を装いながら詐欺や窃盗などを繰り返し、暴動では死体からも金品を奪います。「殺し合い大好きさ」とone day moreでは歌っていますからね。作者ユーゴーからも「救われない」と言われたほどの”悪党のやり方”なんです。
テナルディエ夫妻の劇中での役割
この悪党テナルディエ夫妻は(どちらかというとテナルディエだけ?)この劇中の大切なところで現れてくるキーマンと言ってもおかしくない存在なんです。
まずはコゼットを育てる(いじめる?)ところで、ジャンバルジャンに出会いました。また暴動で亡くなった死体が流れてくる下水道では、死体から金品を奪っていました。
ジャンバルジャンはマリウスが大切なコゼットの恋人だと知っていたので、瀕死の状態だったマリウス(ABCの友のメンバーでコゼットの恋人)を担いで、その下水道を通ってマリウスを助け出します。
そのときにテナルディエに出会い、悪者テナルディエは、抜かりなくこっそりとマリウスの指輪を奪ったのです。
マリウスは気絶していたので、誰かに指輪を盗まれたことも、誰が自分を助けてくれたのかも知りませんでした。
ジャンバルジャンは囚人の身であることをコゼットに伝えていなかったのですが、マリウスには自分の正体を伝えてコゼットの前から離れました。
マリウスとコゼットの結婚式で、マリウスはテナルディエ夫妻から「ジャンバルジャンは人殺しだ、下水道で死体を運んでいた」ことを聞き、その死体から奪った指輪を見せます。マリウスはそこで誰が自分を助けてくれたのかもはっきりしました。
このテナルディエ夫妻、悪党の姿ですが、物語を一つの方向に進めているスゴイ存在だから、目立つように唯一楽しい雰囲気の曲調にしたのかもしれませんね。
テナルディエ夫妻の子供たち
このテナルディエ夫妻の子どもが”On My Own”の曲で有名なエポニーヌなんですよ。この美しい歌を聴く限りでは悪党の両親に育てられたとは思えないほど、まっすぐに育ったなと感じます。エポニーヌについてはまた、紹介しますね。
それからガブローシュ(エポニーヌの弟)と言う息子もいるんですよ。テナルディエ夫妻から愛情をかけられることなく育った彼ですが、明るい性格でABCの友(アンジョルラスがリーダーの秘密結社)メンバーと行動を一緒にしている浮浪児です。最期は暴動で弾丸に倒れてしまいます。
[affi id=2]まとめ
- 宿屋の主の歌はレ・ミゼラブルの中では唯一の楽しそうな印象の歌です。
- テナルディエ夫妻は大変な悪党で、作者ユーゴーからも「救われない」と言われました。
- エポニーヌはテナルディエ夫妻の娘です。
名前が表に出てこない”民衆こそが主役だ”ということがよく分かる、レ・ミゼラブルのテナルディエ夫妻の歌でしたね。
本当にここまで”がめつい人”っているのかは少し疑問ですが、あのフランス革命後の非常時に生きていくための、一つの手段、人間の本質だったのかもしれません。
次回のレ・ミゼラブルを観劇するときは、テナルディエ夫婦にも注目して楽しもうと今から楽しみにしています。